共通の興味・関心がリモートチームを繋ぐ：オンラインで「好き」を共有するアクティビティとツール
リモート環境における共通の興味・関心共有の重要性
リモートワークが普及する中で、チームメンバー間のコミュニケーションは主に業務に関連するものに限定されがちです。オフィス勤務であれば、休憩時間やランチタイム、あるいは偶然の立ち話を通じて、お互いの個人的な側面や趣味、興味といった業務以外の情報に触れる機会が自然に生まれていました。しかし、リモート環境では、このような偶発的な交流が減少し、結果としてメンバー間の人間関係が希薄になる、お互いのパーソナリティを深く理解できないといった課題が生じることがあります。
チームメンバーがお互いの「人となり」を知り、共通の興味や関心を見つけることは、単なる仲良しごっこではありません。共通点を見つけることで心理的な距離が縮まり、親近感が生まれます。これにより、普段の業務におけるコミュニケーションが円滑になったり、困った時に気軽に相談できる関係性が構築されたりするなど、チームの心理的安全性や協調性の向上に寄与します。結果として、チーム全体のエンゲージメントと一体感を高めるための重要な要素となります。
本記事では、リモートチームにおいて、メンバー間の共通の興味・関心を見つけ、共有し、それを起点としてエンゲージメントと一体感を高めるための具体的なアクティビティや、その実施をサポートするツールを紹介します。
共通の興味・関心を見つけるための第一歩
メンバーがどのようなことに興味を持っているのかを知ることから始まります。いくつかの方法が考えられます。
- 自己紹介の工夫: オンボーディング時だけでなく、定期的にカジュアルな自己紹介の機会を設けます。業務スキルだけでなく、休日の過ごし方や最近ハマっていることなどを共有する時間を設けることで、意外な共通点が見つかることがあります。チャットツールのプロフィール欄に趣味を記載するルールを作ることも有効です。
- 簡易アンケートの実施: GoogleフォームやTypeformなどのアンケートツールを使用して、「最近読んで面白かった本」「好きな音楽ジャンル」「行ってみたい場所」など、業務とは直接関係のないカジュアルな質問を含むアンケートを実施します。回答を共有することで、共通の興味を持つメンバー同士が繋がりやすくなります。
- カジュアルな1on1: 業務目標の進捗だけでなく、最近の出来事や個人的な興味について話す時間を設けることで、お互いの新たな一面を知る機会になります。リーダーが率先して行うことで、チーム全体の文化として根付きやすくなります。
「好き」を共有し、一体感を育むオンラインアクティビティ
メンバーの興味・関心が見えてきたら、それを共有・深化させるためのアクティビティを企画します。
- テーマ別チャットチャンネル: チャットツール（Slack, Microsoft Teamsなど）内に、特定の趣味に関するチャンネルを作成します。例えば、「#book-lovers」「#movie-club」「#game-chat」「#cooking-mania」などです。これらのチャンネルは業務外の自由な交流の場とし、情報交換や雑談を促進します。参加は任意とすることで、プレッシャーなく楽しめます。
- オンライン部活動・サークル: オンラインで共通の趣味を楽しむ部活動やサークルを立ち上げます。オンライン読書会、オンラインゲームセッション、オンラインでの絵画や工作、語学学習など、様々な形式が考えられます。定期的に活動することで、共通の話題を通じた関係性が継続的に育まれます。
- オンラインランチ会・コーヒーブレイク: 特定のテーマを設けず、自由な雑談を楽しむ時間です。意図的に少人数グループに分けたり、ランダムな組み合わせにしたりすることで、普段話さないメンバーとも交流する機会が生まれます。
- ナレッジ・スキルシェア会（カジュアル版）: 業務に直結しない個人の知識やスキルを共有する場です。写真の撮り方、おすすめの旅行先の情報、美味しいコーヒーの淹れ方など、趣味が高じた知識を気軽に発表・共有することで、新たな発見や学びがあり、発表者の承認欲求も満たされます。
- オンラインイベント企画: メンバーの興味を活かしたオンラインイベントを企画します。例えば、オンライン料理教室、オンラインワインテイスティング、メンバーの得意分野に関するライトニングトーク大会などです。イベント形式にすることで、より多くのメンバーが参加しやすくなります。
アクティビティ実施をサポートするツール
これらのアクティビティを円滑に進めるために、様々なツールが活用できます。
- コミュニケーションツール: Slack, Microsoft Teams, Google Chatなど。テーマ別チャンネル作成やカジュアルなテキスト・絵文字によるやり取りに不可欠です。
- ビデオ会議ツール: Zoom, Google Meet, Microsoft Teamsなど。オンライン部活動、ランチ会、シェア会などのリアルタイム交流に利用します。ブレイクアウトルーム機能は少人数での話し合いに便利です。
- アンケート・フォームツール: Google Forms, Typeformなど。メンバーの興味関心を知るためのアンケート実施に手軽に利用できます。
- 社内SNS・プロフィール共有ツール: Talknote, Workplace by Facebookなど。メンバーのプロフィール情報に趣味や関心事を登録し、共通点を持つ人を探しやすくする機能がある場合があります。また、カジュアルな投稿を通じて日常や趣味について共有する場としても機能します。
- イベント管理ツール: Peatixや社内向けイベント管理機能を持つツール。オンラインイベントの告知、参加者管理、リマインダー送信などに活用できます。
- オンラインホワイトボードツール: Miro, Muralなど。アイデア共有だけでなく、趣味に関する情報をビジュアルで共有するボードとして活用することも可能です。
導入・活用のポイントと費用対効果
共通の興味・関心を共有するアクティビティの導入にあたっては、いくつかのポイントがあります。まず、参加はあくまで任意とすることが重要です。強制参加では、かえって負担に感じさせてしまう可能性があります。また、これらの活動は、既存のコミュニケーションツール（SlackやTeamsの無料プラン、Zoomの無料枠など）でも十分に実施可能です。追加で高価なツールを導入する必要性は、活動規模や目的に応じて判断できます。
リーダー自身が積極的にこれらの活動に参加したり、自身の趣味や関心事をオープンにしたりすることで、メンバーも安心して参加しやすくなります。また、多様な興味に対応できるよう、幅広いテーマを扱ったり、新しいアクティビティ案をメンバーから募集したりすることも有効です。活動の継続性を高めるためには、特定の担当者を置いたり、定期的にアナウンスを行ったりすることが効果的です。
これらの施策の費用対効果を直接測定することは難しい側面がありますが、メンバー間の人間関係が良好になり、心理的安全性が高まることで、チーム内の協力が進み、情報共有が活発化し、結果として生産性の向上や離職率の低下に繋がるといった間接的な効果が期待できます。既存ツールや比較的安価なツールを活用することで、コストを抑えつつ実施できるため、投資対効果は高いと言えるでしょう。
まとめ
リモートワーク環境下でチームのエンゲージメントと一体感を高めるためには、業務連絡だけでなく、メンバーがお互いの個人的な側面や興味・関心を知り、共有できる機会を意図的に設けることが有効です。共通の「好き」を通じた交流は、メンバー間の心理的な距離を縮め、強固な信頼関係を築く土台となります。
本記事で紹介したような、簡易アンケート、テーマ別チャットチャンネル、オンライン部活動、カジュアルな交流会といったアクティビティは、既存のツールを活用することで手軽に導入できます。これらの取り組みを通じて、リモートチームにおいても、オフィス勤務時代のような自然で豊かな人間関係を育み、チーム全体の活力を高めることができるでしょう。まずは、チームメンバーの「好き」を知る小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。